ゲームのシナリオを書く秘訣
極めて実践的かつ具体的なゲームシナリオ作成入門。
ここまで明瞭なシナリオ作成法を私は他に知りません。
ステップ形式で大変分かりやすいので、初心者の方にもオススメです。
著者の川辺一外氏は映画出身で、知る人ぞ知る脚本家です。
シナリオ理論の研究や後進の育成にも大きく尽力し、CEDECで講師も努めています。
ドラマファクトリー論とは何か?
本書は川辺氏の考案した「ドラマ・ファクトリー」という創作支援システムのチェックリストが付属しています。
読者はそれを埋めて行く事で、シナリオが徐々に出来上がって行く構成になっています。
いきなりですが、本書の本体はコレです。
正直ドラマファクトリーだけでも十分元は取れると思います。
よほどの天才でもない限り、直感と閃きだけでシナリオは書けません。
それに対し本書のドラマファクトリー論は、手順を踏んでシナリオを構築する手法です。
やる事が分かりやすく、とりあえず項目を埋めれば誰でも使えます。
そうやって項目を埋めていく工程を通じて、シナリオ全体の方向性が見えるようになります。
これがデカいです。
有名ゲームの問題点を探る
本書はシナリオ作成法だけでなく、実在するゲームのストーリー分析もしています。
具体的にはドラクエ(1~6)とファイナルファンタジー(6~8)を例に挙げ、前述のドラマファクトリー論に基づいて解説しています。
この解説が単にほめるだけでなく、シナリオの問題点をズバズバ指摘していて面白いです(信者には不快かもしれませんが…)。
特にFF8のストーリーに関する洞察は、私が漠然と抱いていた違和感の正体が明らかになり、とても納得できました(もちろんFF8は面白いですよ)。
大先輩による創作の秘訣
こんな風に、本書はかなり実践的な創作ガイドになっています。
だからゲームシナリオだけでなく、小説を書きたい方にも強力な武器となるでしょう。
(実際この本を参考にして、小説を書き出版した人を知っています)
また著者の川辺氏はゲームの歴史に詳しく、さらに映画・文学・哲学などにも広い知見があります。
そういった多彩な理論を交えて書かれているので、シナリオのみならず創作活動全般に通ずる深い哲学も感じ取れます。
私にとっては、これが最大のインパクトでした。
ちなみに川辺氏は、なんと昭和6年(1931年)生まれ!です。
私から見るとかなりのお年寄りですが、ゲームの膨大な知識には正直驚かされます。
普通にスタークラフトをやり込んだとか書いてあって、相当なゲーマーでもあるようです。
そんな大先輩が長年培った創作の秘訣を知りたい方は、ぜひ本書を読んで欲しいです。
たぶん中二病の方ほど面白い?と思います。
お爺ちゃん、GTAを語る
あと続編であるゲームシナリオのドラマ作法 も良書なので、2冊共にオススメです。
こちらは違ったアプローチでシナリオの根本に迫っており、より深くシナリオの構成を学べます。
ちなみに例に上がるゲームも新しくなってます。
(ドラクエ7~8、FF9~10、グランド・セフト・オート・バイスシティなど)
GTAについて語るお年寄り、なんというパワーワードだ…