とんでもねぇ、待ってたんだ
冒険がお好き?
結構、ではますます好きになりますよ。
さぁどうぞ。12歳のヒロインです。
可愛いでしょう?んあぁ仰らないで
主人公が凡人。
でも超生物なんて時空操作だけで
旧式に手こずるし、芝居は下手だわ、口だけ達者だわ、ロクなことはない。
シュライクもたっぷり出ますよ。どんな残酷な方でも大丈夫。
どうぞ噛まれてください。
いい牙でしょう?余裕の牙だ、殺傷力が違いますよ。
「一番気に入ってるのは…」
何です?
「大佐だ」
第2部で完結、と思いきや…
前の記事ではハイペリオンシリーズ第1・2部を紹介しました。
そして第2部「ハイペリオンの没落」で、スッキリ物語は完結しました。
第3部は、その274年後から始まります。
完結したかと思えた物語から新たな事実が見えて来ます。
今まで空気だった設定が、3部以降で大きな意味を持つのが面白いです。
例えば影の薄かったカトリック教会が、強大な力を持ち銀河を征服しています。
教会だけど軍隊を組織し宇宙戦艦まで持ってやりたい放題。
なお、今回の悪役サイドはこいつらです。
また、ほんのチョイ役だった面々も存在感を発揮します。
第3部 エンディミオン
ついに主人公?登場
2部まで明確な主人公はいませんでしたが、第3部でようやく登場します。
タイトルにもなっているロール・エンディミオン君です。
しがない狩猟ガイドだった彼は不幸にも?救世主(ヒロイン)をカトリック教会から守る旅に出ます。
元ガイドだけに豊富なサバイバル知識で大活躍!
…と思いきや、いかんせん周りがチートスペック過ぎて苦労が耐えません。
彼はヒドい目に会いながら、ヒロインを追手から守りつつ、目的星を目指します。
本作は、カトリック教会から逃げながら、風光明媚な惑星を巡る冒険の旅です。
お次は大冒険と来たわ!
こんな風に今作からは、明確な主人公、ヒロイン、敵役が存在します。
群像ドラマ色が強かった第1・2部に対して、こちらは冒険とエンタメ要素が強化され、スリルとわくわくが増しています。
SFでお馴染みのアイテムもバシバシ登場します。
レーザーランス、荷電粒子ビーム、万能コンピュータ、懐中レーザー、プラズマライフル、ウルトラモルヒネなど
映画的な見せ場も多く、ゲーム化したら面白そうだなと思いました。
登場人物の立ち位置も分かりやすいので、ここで少し紹介しておきます。
魅力ありすぎ登場人物
まずは主人公サイドです。
ロール・エンディミオン
28歳。平凡な狩猟ガイド。無茶振りに付き合わされる不幸体質。頭の回転も今ひとつ。でも心優しく思いは本物。やる時はやる主人公です。
アイネイアー
ヒロイン。誕生の経緯から救世主となる宿命を持ち、教会に狙われる。若干12歳ながら、強い使命感・広範な知識を持つ。年相応に泣き虫な面も。
A・ベティック
穏やかな性格のアンドロイド。強靭な体で2人をサポートしつつ、暖かく見守る。ほとんど表情を崩さないが、不意に見せる感情がお茶目。
宇宙船
おしゃべりな旅の船。話が長く空気も読めない。でも妙に可笑しく、憎めないヤツ。実はロストテクノロジーで高性能。
マーティン・サイリーナス
1・2部に引き続き登場の詩人。もはや老人ではなくゾンビだが、相変わらず口汚い。エンディミオンを(強引に)旅へ送り出す。
続いてカトリック教会(敵)サイドです。
デソヤ神父大佐
アイネイアー捕獲部隊を指揮するカトリックの軍人。判断力・洞察力に優れ、ユーモアも人望もある高性能おじさん。第3部もう1人の主人公。
グレゴリウス軍曹
デソヤの部下。戦士の一族に生まれ、屈強な体と強い精神力を持つ。デソヤの信頼も厚い。
ネメス伍長
デソヤの部下。女性。鼻につくウザい笑い方をする。意外にドジっ子。
その他。ネタバレにならない程度に。
シュライク
シリーズ全作に出演する超生物。今回は格闘戦が増えてウキウキであろう。またもや不思議な行動をする。
アウスター
宇宙に適応して進化した人類。教会と激しい戦いを繰り広げているらしい。見た目は多様で、羽が生えてる者もいる。
テクノコア
宇宙のどこかにある人工知能集合体。考え方のスケールがデカい。
第4部 エンディミオンの覚醒
人類、いや生命の未来を開く戦い
さていよいよ第4部です。
長かったハイペリオンシリーズもやっと完結です。
4年の時を経て、アイネイアーが救世主たる使命を果たすべく、遂に行動を開始します。
簡単に言うと、黒幕を暴いて人類を救おうぜ!って事です。
エンディミオンも無茶なミッションに挑み、例によって死にかけます。
しかしヒーローらしく奮闘し、なんだかんだで活躍します。
頼りないけど時々カッコいい、そんな等身大のヒーローですね。
そらアイネイアーじゃなくても惚れますわ。
今作では彼だけでなく、多くの人々が勇気を奮い起こします。
その心意気、ぜひ感じてあげて下さい。
戦力差を覆す秘策とは?
何千もの星々を支配する巨大なカトリック教会、それに少人数で立ち向かう。
あまりにも無謀で勝ち目のない戦いですが、そこは切り札があります。
その切り札とは何か?
ネタバレになるので書けませんが、何というか道のりは壮絶です。
第2部に続き、また私は泣きましたよ…
その過程で、ハイペリオンシリーズの総決算だけにオールスターが集結!
物語は一気に盛り上がります。
あえて言おう、これはハッピーエンドであると。
宇宙の繊維に耳をすます
ハイペリオンシリーズは娯楽としても最高ですが、実はかなり深いテーマを扱っています。
生命と死、神と宗教、心と言葉…
なかなか純文学めいた側面もあると感じました。
作中で古典を引用しながら、人の、世界のあり方を何度も問いかけます。
そしてアイネイアーが救世主として結ぶ1つの言葉。
私も読みながら唸りました。
この世の本質とは一体…うーむ、考えさせられる。
それに関連して、夢枕獏(神々の山嶺など)氏による「あとがき」も必見です。
ちなみに私は本作を読んで、自然風景の見え方が少し変わりました。
おまけ:まちがい探し
さて、ひじょーにどうでも良いのですが、下巻の表紙絵には間違いがあります。
明らかに内容と矛盾した光景が広がってます…
最初は勘違いかと思いましたが、注意深く読み直してみてもやっぱりおかしい。
お暇な方は探してみて下さい。
答えは…以下クリックで反転(ネタバレ注意)
A・ベティックの左腕がある。
エンディミオン下巻で失ったはず。
終盤の描写でも片腕と書いてある。
外伝 ヘリックスの孤児
救われた世界のその後
「エンディミオンの覚醒」で長かったシリーズも完結しました。めでたしめでたし。
なんですが、後日譚があります。
それがこの短編「ヘリックスの孤児」です。
なお舞台は第4部から480年後になります。
第4部で重要な役割をした一族が、謎の生命と遭遇するお話です。
前述の深いテーマと絡む生命観が見えます。
ファンなら必ず楽しめまする
もちろんファンならニヤリとできる場面が多数あります。
アイネイアーは本当に救世主だったんだな、と実感できました。
あと、この外伝には何故か和風のAIが登場します。
西行や芭蕉など日本人の名前を持ち、古風な口調で喋り、どことなくユーモラス。
翻訳もしっかり古めかしい言葉になり、シリアスなシーンでも謎の安心感がありまする。
奇妙な優雅さで作品を彩ってるので読んでごされ。
本作はサクッと読める短編で、ほんの少しだけ未来を覗き見できます。
シリーズを読み終えた後に、ぜひこちらも読んで欲しいですね。
ラストには思わず笑みがこぼれました。