アイデアをゲームにする方法
天外魔境2、リンダキューブ、俺の屍を越えてゆけ等を手がけた桝田省治氏の発想に迫った一冊。
ゲームの企画を目指す人にオススメです。
いわゆる奇抜なゲームで知られる氏が
どうやって着想を得て、どのようにゲームとしてまとめるのか?
というプロセスを赤裸々に(本当にそう)解説しています。
具体的な作品名を挙げながら書かれているので、思わず「なるほど~」とうなる回数が多いです。
誰でも使えるノウハウが多い
本書は、実にシンプルな3章構成です。
- 1章 みつける ゲームになるネタの見付け方
- 2章 つくる ネタを企画・仕様へ落とし込むノウハウ
- 3章 考える 桝田氏のゲーム論 面白さの分析
特に1章と2章は、ゲームを企画するプロセスを詳しく解説しているので、プランナー志望の人は必読の内容です。
こういった書籍でよくありがちなのは、著者があまりに天才過ぎて
「そんなの真似できるか!」 「話が哲学的で分からん!」
みたいな感想になるケースです(そんな経験ないですか?)。
しかし、本書は意外に(失礼)体系的かつ論理的で、誰でも実践できる方法が多く書いてあります。
だから読むだけでも、ゲームを企画するノウハウの引き出しを一気に増やすことができます。
私見ですが、いつもいつも「アイデアが浮かばない」と言っている人は、単純な閃きだけに頼っているように感じます。
実の所アイデアは一定の手順と分析で、ある程度まで導き出す事ができます。
本書に載っているノウハウは、そういった現実的な知恵です。
ただのしかばね に込められた…
私が一番印象に残ったのは、第2章の「着想を企画書に落とす」です。
ここでは俺屍やリンダキューブを例にして、氏の思考(発想)過程がイメージしやすく解説されています。
特に俺屍が「システム自体でドラマを生成する」ようにバランス調整されている点は、私が過去に関わった微妙ゲームと比較しながら興味深く読めました。
また、ドラゴンクエストでよく目にする
へんじがない ただのしかばねのようだ
が天才的な珠玉のメッセージである理由も解説しています。
これにはかなり納得すると同時に、恐ろしささえ覚えました。
こ、これが一級のゲームデザイン脳なのか…
制限と付き合うヒント
あと、もう一つ言わせて下さい。
本書を読んで感じた事の一つに、桝田氏の「制限をクリアする」創造力があります。
現実にゲームを作るには、様々な制約があります。
予算、プログラミング技術、広報の都合、上司の意向、スケジュール、体調不良などなど
そんな状況でも、こういった難点をうまく乗り越えた例が本書には色々出て来ます。
これが私の場合(講師として)学生のゲーム作品へアドバイスする時にかなり役立ちました。
当然ですが学生のプログラミング技術は足りない事が多いです。
また多くの授業がある中、なんとか期限までに完成させる必要もあります。
こんな時に本書の考え方はなかなか参考になりました。
どこを割り切るか、逆手に取って面白くする、プレイヤーを納得させる方法など
学生の制約をクリアするヒントにかなり役立っています。
なんというか、私もゲームデザイン脳にちょっと近付いた気がしました(ドヤァ)。
以上のように様々な学びが得られるので、企画志望の人はもちろん、創造力を高めたい全ての人にオススメの一冊です。