「算数」で論理が見える
本書はプログラミングの本ではなく、純粋な数学的思考(論理)がテーマです。
なんですが、著者も言っているように、使う知識は算数レベルがメインになっています。
まえがきによると想定読者は「小学五年でつまづいた人」だそうです。
そんなわけで高度な数学知識がなくても読めるので、私のような文系には嬉しい一冊です。
直感と論理を結べ
本書は論理的思考がテーマですが、興味深いのは直感的思考にもスポットライトを当てる点です。
例えば、動物は直感で行動します。
決定や選択はその時の気分次第です。
それに対し人間は、知識を整理して決定をします。
すなわち論理をベースに考えています。
しかし人間だって常に論理的なわけではありません。
その証拠として、私たちは次のように直感的なフレーズをよく口にします。
- ~のような気がする
- ピンと来る
- イメージが湧く
- たぶん大丈夫そう
つまり私たち人間は、論理と直感の両方に影響されるわけです。
で、前置きが長くなりましたが、何が言いたいかと言うと
人に何かを説明する時、論理だけでは分かりにくい。
直感的な話も混ぜると説得力が増すよ!
って事です。
ジッサイ私も日々の講義で、この点の重要さを何度も実感します。スゴイダイジ。
(そうしないと学生が寝始めるんです)
本書もそんな感じで、論理的に推論を進めつつ、ときおり直感的に分かりやすい説明をしてくれます。
だから私含め数学の授業が嫌いだった人でも、比較的すんなり読めると思います。
右脳と左脳を行ったり来たり
さて本書は、一風変わった例題(野球の勝敗とか)を通して
問題を解きほぐし単純化する過程
を鑑賞する事ができます。
その際に著者は、筋道を立てて、論理的な思考を展開しています。
そして前述の通り、かなり直感にも配慮してイメージが湧きやすいよう頑張っています。
しばらく論理的な説明をしたら、イメージしやすい話題で直感に訴え、その後また論理へ戻る。
そんな流れで推論を展開して行きます。これが実に見事でした。
(私は何度も出てくる虫さんがお気に入りです)
論理のブースター
また本書のような論理と直感を併せたアプローチは、分かりやすいだけでなく、斬新で創造力を刺激してもくれます。
だから著者の言うところの「数学マニア」でも、読んで得るものが結構あると思います。
私は読んだ後に「最近論理に捕らわれ過ぎてたかな…」とかなり反省しました。
あと推理小説に出てくる名探偵は、この論理と直感のバランスに優れた人が多いですね。
そんなわけで本書を読むと、
より柔軟な頭の使い方が分かり
アルゴリズムを生み出すスキルが向上する
と思います。
なお読む際は、先頭から順にめくる必要はありません。
各章は独立しているので面白そうな所から始めると良いですよ。