セガ発:開発現場の知恵が分かる
セガの新人研修テキストをベースに、ゲーム開発の実践的手法をまとめた一冊です。
そして本書はその独創さが光っています。
それは色々なトピックを扱いながらも、その順番が良い意味でバラバラな点です。
例えば数学だけを最初の方にまとめるのではなく、必要になったらその都度解説します。
たぶん内容をソートすれば体系的になりますが、あえて?それを崩した構成になっています。
その結果、全体に臨場感と親しみやすさが生まれ、講義を聞いているような気分になれます。
現実的で実践的な構成
本書では2Dと3Dのゲームを開発しながら、その都度発生するトピックに対処して行きます。
冒頭で書いたようにその順番はバラバラになのですが、言い換えると極めて現実的です。
つまり、実際の開発現場でブラッシュアップを重ねるケーススタディとして上手くできています。
個々のブラッシュアップで紹介するワザは、現場で培われたと思しき実践的な内容です。
また本文中の局面以外でも使えるものも多く、かなり応用の幅が広いです。
特にシーケンス(状態)遷移についての話題は、長らく色んな本を読んできましたが、その中でも出色の出来だと思いました。
もう一つ強調したいポイントとして、文中の解説が「原理やハードウェア」といった技術の根っこにしっかり触れているのも好印象です。
なる前となった後
本書は「なる前に」というタイトですが、実は「なった後」でも使える知見の深い一冊です。
正直な所、実務経験が無いとピンと来ないトピックもあったりします。
本書のレベルに及ばなくても、ゲーム会社でプログラマやってる人はゴロゴロいます。
逆に言えば、学習時は分からなくても気にしなくて良いって事ですね。
一から全て理解するのではなく、分からない事があっても次の章へ移ればOKです。
そうやってどんどん読み進めて行きましょう。
経験を積んだ後に読み返すと、飛ばしたトピックも理解しやすくなって来ます。
本サイトでも大人気の一冊
読者レベルとしては、C++の基礎(継承クラスが作れるくらい)を知っているのが前提です。
DirectXに関しては付属のライブラリを使うので、詳しく知らなくても大丈夫です。
値段は4500円しますが5冊分くらいの価値は十分あり、元は余裕で取れます。
800ページを超えるボリュームは伊達じゃありません。
また付属のライブラリもかなりの優れものです
総評としては、基本と応用がふんだんに配されコストパフォーマンスに優れた一冊です。
本書を著した平山氏の気概に、心から敬意を表したいです。
ちなみに過去行った本サイトの人気ランキングにおいて、全ての回でトップスリーに入ったのは本書だけです。
2020年の補足
本書も発売から月日が経ち、現在の環境では、サンプルやライブラリのビルドが出来なくなっています。
したがって、今となっては本書のソースを使うのは厳しいと思います。
ただ、読む価値が全くないと言うわけではありません。
本書は(ソース以外の)アルゴリズムや設計の解説も良い内容になっています。
つまりブログみたいな読み物としては今でも有用な一冊です。
しかし価格が問題ですね…サンプル抜きで約5000円は割高に映ります。
だから中古で安く手に入れるのがベターかと思います。
2000円未満なら読む価値アリです。
さらに2021年の補足
前の段落でビルドが出来ないと書きましたが、なんと有志の方が現代の環境に対応した修正をしてくれています。
ゲームプログラマーになる前に覚えておきたい技術 近代化プロジェクト
上記URLの手順に従えば、VisualStudioのバージョンに依存せずビルドが可能です。
感謝の気持ちを込めて利用しましょう。